読了。書店にて購入した本。この小説を読んで新井素子さんの『・・・・・絶句』を思い出したという評判をネットでいくつか見かけたので、興味を持って読んでみた。男の子の一人称が大変読みやすくスラスラ読めてなかなか面白かった。作中にいくつか日本SFのタイトルが出てきたり*1「刻の涙」なんて単語がころんと出てきたりする処が作者のバックボーンを感じさせて愉快である。
作品として大変優れていると思うので別の作家の小説タイトルを出すのも気が引けるのだが、あえて新井素子作品の名前を出すならば『・・・・・絶句』よりもまず『いつか猫になる日まで』を思い出した。共通点を言えば、
- 造物主の退屈しのぎのために世界が存在する
- ガール・ミーツ・ボーイのお話
の2点だろうか。
言われてみれば確かに、世界が涼宮ハルヒのインナー・スペースである処は『・・・・・絶句』を、涼宮ハルヒの持つ現実変革能力は『星へ行く船』シリーズを想起させるものではあった。ただ、作中ではネタとして見事に昇華されており、予め人の評価を聞いていなかったら連想することはなかったかも知れない。
- 『涼宮ハルヒの憂鬱』,谷川流,角川スニーカー文庫,514円+税,ISBN:4044292019
現実変革能力と言えば、現在調査中の『S-Fマガジン』1984年分から、5月号に掲載された久美沙織の初登場あいさつに興味深いことが書かれている。P.82より。
昔、素子姫とおしゃべりしてるうちに、同じ奇跡を信じてるんでびっくり、大感動したことがあります。本気で望むことは、なんだってかなう、ってこと。いくら待ってもめぐりあえないもの(こと、人)は結局どうでもいいもの。与えられる経験のすべてが、夢の鍵、神さまは私を愛してる!!
新井素子作品のいくつかに見ることができる設定は彼女のこうした信念の反映であるらしい。