吾妻ひでお『逃亡日記』。

読了。自店にて購入。収録されている漫画で吾妻氏自身が「便乗本じゃないのっ」とつっこんでとおり、タイトルといいインタビューでお茶を濁す内容といい確かにその趣は漂っている。ただ『失踪日記』には書かれていないエピソードが書いてあったりとか、アル中が進行していく過程とか、奥さんと娘さんの証言など興味を惹くネタはかなり豊富で面白く読んだ。しかし相変わらず精神衛生には悪いエピソードが満載である。思わず理力の暗黒面に取り込まれ読んだ後ちょっと凹んだ。
前述の漫画の中に新井素子さんが登場してくる。手塚治虫文化賞マンガ大賞贈呈式の模様を描いた箇所で、招待客の中にいた新井素子さんと対面するコマがある。P.8より。

新井「太っちゃったー」
吾妻「いいんじゃないっすか」

吾妻氏が新井素子さんを書いたのってどれくらい振りなんだろうか。かなり年月が経っていることは確かだろう。吾妻氏描く「もとちゃん」が一世を風靡したことを思い出すと、たった一コマであるが非常に感慨深い絵であるのだった。
他にP.178にも新井素子さんの名前が登場してくる。

――新井素子さんとの日記とかあったじゃないですか。SFのブームと吾妻さんの人気がリンクしてたわけですよね。その辺については?
SF……SF、ギャグ、ロリコンで大爆発(笑)。あのころは『別冊奇想天外』でずっとやってたんだよ。あれで奇想天外社は儲かったはずなのにつぶれちゃった。あそこで『劇画アリス』の作品をまとめて『陽射し』って本出したんだ、大判の。で、新宿の大きい本屋でサイン会したら、えらい列できちゃって。夜までかかってサイン描いていた。本屋が閉まっちゃって、そのあとは倉庫で書いてた。

できれば日記執筆時のエピソードでも聞きたかったんだがまあ仕方ないか。ちなみに新井素子さんに対する脚注はこんな感じ。

新井素子=SF作家。一九六〇年、東京都生まれ。主な作品に、『グリーン・レクイエム』『チグリスとユーフラテス』など。文中の日記とは『ひでおと素子の愛の交換日記』のこと。