『SF本の雑誌』(別冊本の雑誌15)。

7月1日に発売された本。購入したのは7月8日。『本の雑誌』に掲載されたSF関連記事を中心に、独自の「オールタイムベスト100」、コラム、円城塔椎名誠SF小説とり・みきの漫画などSF成分満載の本である。記事の中に新井素子さんの名前が登場してくる箇所があるので抜き出してみる。

本の雑誌が選ぶSFオールタイムベスト100」

大森望鏡明風野春樹の三人が選ぶSFオールタイムベスト。75位に「グリーン・レクイエム」がランクインしている。「号外!SF本の雑誌」(PDFファイル)を見ると、推薦したのは風野春樹のようだ。そう言えば、風野は『S-Fマガジン』の「SFオールタイムベスト2006」でも日本短編部門で「グリーン・レクイエム」をベスト5に挙げていた。

座談会「SF者人生双六を作る!」

本の雑誌」傑作選3より。初出は2003年6月号、「われらSF者宣言!」という特集内で掲載された。出席者は大森望堺三保三村美衣。SF者の人生に起こりがちな出来事を双六で表現しようという企画で、水玉螢之丞が双六を作っている。P.77に新井素子作品のタイトルが出てくる。

大森 双六のコマ全部にSFのタイトルをつけるのもいいね。
三村 最初は『夏への扉』で、古本屋に行くコマは『奇妙な触合い』。SF大会は『おしまいの日』ね。もう後に戻れないから。

『おしまいの日』がSFか、という突っ込みもあるかもしれないが、SF作家が書いた小説なので無問題なのではないかと。

定点観測10「いまどんな文庫SFが読まれているか」(亀和田武

本の雑誌はSFをどう伝えてきたか!」より。初出は第27号(1982年9月)。池袋ブックセンターのデータを編集部が集計した文庫SFの売上ベストランクが50位まで掲載されている。新井素子さんについて本文で特に触れられているのでその部分を抜き出してみる。P.112-113より。

さらに特定の作家について言及すると、意外というか予想通りというか新井素子の大健闘がある。22位の『通りすがりのレイディ』は今年に入っての刊行とはいえ、1・15の発売であるから、セミ・ロングセラーといえないこともない。52位には『いつか猫になる日まで』も入っており、特定読者がついているという点では筒井康隆に次ぐ存在かもしれない。SF大会で選定される星雲賞の短編部門を、彼女は今年、2年連続受賞した。

ちなみにランキングのベスト10は以下の通り。

  1. 暗黒世界のオデッセイ(筒井康隆新潮文庫
  2. エクスプローラー船消滅! ペリー・ローダン79(クラーク・ダールトン/ハヤカワ文庫SF)
  3. 幻魔大戦(16)(平井和正/角川文庫)
  4. アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(P・K・ディック/ハヤカワ文庫SF)
  5. 1000年女王(映画篇)(藤川桂介松本零士集英社文庫コバルトシリーズ
  6. 進化した猿たち(3)(星新一新潮文庫
  7. 進化した猿たち(2)(星新一新潮文庫
  8. イリスの石 グイン・サーガ外伝2(栗本薫ハヤカワ文庫JA
  9. 剣の騎士 紅衣の公子コルム1(マイクル・ムアコック/ハヤカワ文庫SF)
  10. エディプスの恋人(筒井康隆新潮文庫

新井素子さんの小説は、20位に『星へ行く船』、22位に『通りすがりのレイディ』、36位に『あたしの中の……』(いずれも集英社文庫コバルトシリーズ)がランクインしている。

SFレビュー「大人のSFはどこへ行ったのだ」(最上勝平)

本の雑誌はSFをどう伝えてきたか!」より。初出は第32号(1983年9月)。ジュブナイルSFを読んだレビュー。文中に新井素子さんの名前が出て来る。

氷室冴子『シンデレラ迷宮』も暗い話。普通の女の子が突然、童話の世界へまぎれこんでしまって、という新井素子流のフワフワ・ファンタジイを思わせる設定なのだが、結末がえらく皮肉で、パロディと言いたくなってしまった。どうパロディか、を説明するにはラストを明かさなければならないから、委細面談にしておく。題名のシンデレラは、シンデレラ・コンプレックスのシンデレラ――これでも説明のしすぎかもしれない。さすがに『クララ白書』の印税でマンションを購入したと噂されるだけの実力の持ち主である。

SF者用語辞典(作成・SFファン交流会

タイトル通り、SF関連用語を解説した辞典。新井素子さんの名前が出て来る項目が一つある。

●第一世代/第二世代/第三世代
デビュー時期による日本のSF作家の分類法。第一世代は星新一小松左京筒井康隆ら昭和十年代以前の生まれで三十年代のデビュー、第二世代は梶尾真治鏡明山田正紀ら昭和二十年代前半生まれで四十年代後半のデビュー、第三世代は夢枕獏神林長平新井素子ら昭和二十年代後半〜三十年代前半生まれで五十年代前半のデビュー。これらの作家はデビュー方法に特徴があって、SF専門の新人賞に入選したか、ファンダムを経由してプロになったかのほぼどちらかである。現在ではSF専門の新人賞だけでなく、他ジャンルの新人賞からもSF的な傾向を持つ作家が輩出されるようになり、ジャンルの垣根を越えて参入も活発化した結果、新しい書き手の年齢や経歴も多様化している。このため、複数の作家をひとつの世代としてまとめる捉え方も変わりつつある。

第二世代と第三世代の境界は非常に曖昧な気がする。

夢枕獏神林長平は年齢が第二世代の方により近く、年齢だけ見れば新井素子さんと同世代に括るのは無理があるんだが(新井素子さんのデビュー当時、SF作家のパーティに行くと一番年が近いのが夢枕獏だったという話を対談(『場外乱闘である』)でしていたが、それでも9歳違うからね)、「スターウォーズ」(日本公開は1978年)が巻き起こしたSFブームより後に売れ始めた作家を第三世代に括る、というのが一つの見方であるらしい。