栗本薫『見知らぬ明日』グイン・サーガ第130巻。

未完のまま迎えた最終巻である。この巻も完成している訳ではなく、さる女性登場人物がいずことも知れない部屋で目覚めた場面で唐突に(未完)の文字が。本当に、終わってしまった。終わってないけど。人生という名のパズルからピースが一つこぼれ落ちたような、そんな欠落感がどうしても、ある。
本編に初めてついた巻末解説を読むと、作者とグインの初代担当編集者であるその夫は他の人が続編を書くことを容認したようだが、実際問題として残りの数十巻(200巻完結とするとあと70巻)を文庫書き下ろしで何十年も続けることのできる書き手がこの世界に存在するのだろうか、という疑問にたどり着くのである。やるとするれば作業チームを組んで複数人で執筆に当たるというのが一番現実的だろうが、それにしても大変な手間が必要だろうし、簡単にできることではない。それでも、「創作ノート」は残っているんだから、そのストーリーに添って出してくれる分には個人的には読んでみたいとは思う。作者への思い入れとは別に、物語の行く末を確かめてみたいという欲求は俺の中に確実に、ある。


「創作ノート」を読んでいないので今後の展開は判らないのだが、ちょっと先の展開はこんな感じになるのだろうか?
クリスタル・パレスを奇襲したゴーラ王イシュトヴァーンはパロ女王リンダをさらいゴーラへと連れ去ってしまう。リンダに求婚していたクムのタリク大公はこの非道に怒り、ゴーラ・クム間に戦争が勃発(モンゴールも参戦か?)、これにゴーラは勝利しクムを併呑、ゴーラ三国の統合を成し遂げる。一方窮乏状態のパロはさらに国家元首が拉致・誘拐されるという国家的危機に陥るが、最高王位継承権者アル・ディーン君は例によって出奔、宰相ヴァレリウスはやむなく廃王レムスを再び王座に就ける。サイロンにおける黒死病の蔓延により危機に陥った北の大国ケイロニアはグイン王の尽力により何とか平静を取り戻すが国力は疲弊しゴーラの横暴を止められない。ここにケイロニア・グイン、ゴーラ・イシュトヴァーン、パロ・レムスによる三国鼎立時代が到来。そしてミロク教の聖地ヤガの不穏な動きを掴んだグイン王は、放置すればまた中原に災厄が降りかかるとスカールと共に新たな冒険へと旅立つのだった……
なんてな。本当はどうなる筈だったのかねえ。