大塚英志『「おたく」の精神史』。

読了。タイトルに「一九八〇年代論」とあるように、1980年代的な一側面である「おたく」文化を検証することによって今日の日本に於ける諸問題を改めて浮かび上がらせるという意図を持った本。主に大塚英志が関わった事柄を採り上げているので個人史としても読める。
「1980年代」に「おたく」と来ればその文脈上で新井素子がクローズアップされることもあるかと思って読んでみたが、期待したような採り上げられ方はなし。ただ「おたく」という言葉の起源について「バラエティ」誌に掲載された「ひでおと素子の愛の交換日記」に言及があるのみ*1。(P.28)他に「朝日ジャーナル」誌に連載された「若者たちの神々」の「神々」の一人として名前のみ記載あり。(P.30)
1980年代は俺の10代とほぼ合致している。1980は小学6年生、1989年は大学3年だった。当時「おたく」の走りだった自分を取り巻くあれこれがそのまま語られているのは懐かしさを感じると共に興味深かった。あぽ(かがみあきら)のマンガに出てくる「オーツカ某」が大塚英志であることに初めて気づいた。

*1:文庫版『ひでおと素子の愛の交換日記』第1巻に収録されている「あたし、旅に出ました」のこと。