片山憲太郎『電波的な彼女』。

読了。第3回スーパーダッシュ小説新人賞の佳作受賞作「電波日和」をタイトル変更して出版した作品。選考委員を新井素子さんが務めているので読んでみた。青春ミステリというか青春サスペンスと言えばいいのか。「青春」てのも古くさい言い方だが。話はとても面白く読めた。文章も達者だし話も起伏に富んでいて最後まで飽きることがない。新人の作品とは思えないほど粗が目立たずよくできていると思う。
ちなみに新井素子さんの選評はこんな感じ。

同じく佳作の『電波日和』。これは、文章もいいし、キャラクター造型もいい、読み終えた時、私は納得できた。だが……細かく見てゆくと、とっても変なのである。一番問題なのが、主人公と母親の関係。前半と最終局面で、あきらかに“母像”がぶれている。おかしい。それに。主人公は、学校内で友達がまったくいない、不良として描かれているんだけれど……どう読んでも、この主人公、いい奴だよ。主人公は、自分で自分のことを、「不良として徹底できない中途半端な奴」って規定しているけれど、この主人公は、まったく、中途半端じゃない。中途半端じゃなく、“いい奴”なんである。

「“母像”のぶれ」は読んでいて確かに違和感があったものの、話を盛り上げる要素として場面に溶け込んでいたので個人的には許容範囲であった。主人公が「いい奴」すぎることについてはあまり気にならなかった。受賞後にどのような加筆訂正が行われたのかは判らない。