チーム内の「競争」について。

山本昌邦新監督が記者会見でも口にしていた「競争」という言葉について。
浦和レッズファンの著者が書いた『浦和レッズ2001戦記 再生への序章』という本に、ジュビロ磐田顧問である「黄金の左足杉山隆一のインタビューが掲載されている。かつては三菱自動車サッカー部で活躍し、著者が心酔していた杉山に、当時不振に喘いでいた古巣のレッズのことについて訊ねた一連の質問の中で、杉山はこのようなことを言っている。

「差というか、考え方の違いを感じる。あの2トップのことばかりではなく、選ぶ基準とか流れという面でね。こういうことはチームの”補強”という面にも現れてくるから」
 杉山は典型的な例として、かつてレッズとジュビロの間に起こったある新人プレーヤー争奪戦のエピソードを明かしてくれた。
「能力も高く将来性のある選手だったんで、ウチも欲しかったんだけど……。とにかく彼自身は試合に出たいという。レッズならレギュラーでやれると」
 常時出場を目標としたその選手を、ジュビロは結局レッズに明け渡したという。
「それは彼の考え方だし、プロとして一理あるとも思うんです。でもこれは持論なんだけど、やはりウチは競争にこだわりたい。ポジションはチームの中で競り合って取るものだ、という位置付けを前提にしてやってきた過去があるわけだから」

杉山隆一は、ジュビロ磐田の前身ヤマハ発動機サッカー部の立ち上げから監督・総監督としてチームの礎を築いてきた人物である。山本昌邦は言ってみれば彼の教え子であって、「競争」という意識はヤマハのサッカーに受け嗣がれる遺伝子みたいなものなのかも知れない。こうしてヤマハ発動機サッカー部は何もないところから強くなってきた、という歴史がある訳である。
杉山はこの他にも自らがどのようにチームを築き上げてきたかを語っている。商売上のノウハウを公開しているみたいなもので、含蓄に富んだ言葉にはうーむと唸らされるのである。
この本には他にもヤマハ発動機サッカー部の立ち上げに関わり、ジュビロ磐田の名物社長としても名を馳せた荒田忠典へのインタビューも掲載されていて、かなり面白い。初めて読んだ時は、ジュビロを持ち上げすぎのような気もして面映ゆかったが、レッズとジュビロの立場が逆転した今読み返すと、却って新鮮である。強がりじゃあないよ。ジュビロ磐田のルーツを探る上で貴重な資料だと思うから。
一応紹介しておくか。