『素子の読書あらかると』。
読み返した。「はじめに」に書かれた内容に感銘を受けた。P.14の「それにまた。」以降の文章である。新井素子さんが、本と出会うとはどういうことか、というのを書いておられる。その最初の部分を抜き書きしてみる。
本と出会う時には、読者の方の年齢だの精神状態だの成熟状態だの、色々なものがネックになります。
とはまさにこの本を読んで感じたことであった。実際、単行本版を読んだ時にはこの部分にもさしてひっかかることなく読み流していたものだ。それが今改めてこの本に出会い、過去には感じなかった思いが様々に湧き起こったりするのを身内に体験すると、俺にとって物凄い説得力に満ちている。この部分ばかりでなく、エッセイの内容から受ける印象がまるで異なっていたりもするのである。例えば、前は「ある意味でホラーでミステリー」の中で紹介された夏樹静子の腰痛闘病記『椅子がこわい』なんて全く関心を惹かれなかったのだ。だが、今回は読み終わって思わずamazonに注文してしまった。この違いに自分で驚いたのである。
単行本が出てから文庫が発売されるまで、たった4年とちょっとの間にも人は変わらずにはいられない。そのことを痛切に再認識させてくれたという点で、なかなか味わい深い読書体験だった。