荒神伊火流の小説を読む。

はてなキーワードの「黒歴史::その他」によると、荒神伊火流とは森岡浩之の変名で、この名前でエロ小説を書いていたらしい。調べてみるとフランス書院のナポレオン文庫というレーベルから本が出ているようだ。で、森岡浩之強化月間の一環として古本屋で買ってきた。以下の5冊である。

これらは1994年から1996年にかけて出版されており、作風の変化を確認してみようかと出版順に読むことにした。エロを主眼とした小説は読み慣れていないのでどんなものかと興味津々である。俺も男の端くれなのでそりゃあこういうのは嫌いじゃない訳ですよ。内容はと言うとSF(スペースオペラや戦争物)またはファンタジーで少年少女たちが活躍しアニメ絵風のイラストが付いている。そういう意味では「ライトノベル」に分類される話かとも思うのだが、エロ小説も「ライトノベル」の範疇に入るのかね?
最初の『スカイ・ウェブを突破せよ!』は率直に言って面白くなかった。普通のSFにただエロな場面を切り貼りしてはめ込んだだけのようで、物語の出来もエロの興奮もどちらもが中途半端。濡れ場が登場することに物語上の必然性が無く、物語とエロの相乗効果が感じられない。強引な設定で濡れ場にもつれ込んでしまうという描写は即物的で全く俺の好みでなくつまらないのである。なんかこうもっと濡れ場にいたるまでの過程を話の流れにうまく乗せて盛り上げてくれよと言いたくなる。
大して期待してはいなかったとは言えこれではちと読むのは辛いなあと思いつつ二冊目に手を出す。案に相違して、二作目以降は濡れ場が物語の展開に一役買うというような工夫がだんだんと見られるようになっていた。物語も突出した面白さや驚くような展開はないもののこぢんまりと良くまとまって、三作目の『皇女セシルの冒険』以降は途中で飽きることなく読み終えることができた。慣れの問題なのか最初に比べると物語とエロの相乗効果が高まっている。エンターテインメント作家として着実に成長しているという印象である。一番面白かったのは『魔道騎士アリアン』だなあ。この中で唯一のファンタジー作品である。話の流れが良い方に期待が裏切られることがあったのと、運命に翻弄される主人公の姿に魅力を感じたことが良かった点である。
で、結局この人は森岡浩之本人なのかね。「廉恥心」という言葉を使う共通項は発見したが。うーむ。ネットで検索したこれを読むと本人が誤魔化そうとしている様子は伺える。

bookグループキーワード:森岡浩之」には公然の秘密と書いてあるくらいだから、俺が知らなかっただけできっと有名な話なんだろう。そうだったのか。
では『月と闇の戦記』第三巻と『星界の断章』第一巻を残して既刊はあらかた読み終わった処で*1、次はいよいよ新井素子さんが『週刊ブックレビュー』で推薦していた『優しい煉獄』を読むことにしよう。

*1:いやまだこんなのもあるらしいんだが。→『スタリオン・サーガ』(18歳未満お断り)