山形石雄『戦う司書と恋する爆弾』。

読了。第4回スーパーダッシュ小説新人賞で大賞を受賞した二篇の内の一篇である。
300年の時を隔てた魔女と爆弾のお互いへの恋心が明らかになっていく過程は思わず感情移入してしまい不覚にも泣きそうになった。しかし小説全体での満足感が低いのは何故だろう。完結していないということは大きな原因であると思われる。
ちなみに新井素子さんの選評は以下の通り。

大賞をとった、『戦う司書と恋する爆弾』は、世界設定がちゃんとできていて、しかもなかなか感動的。それに、“本”“爆弾男”“百年に一度の嵐に百年に一度の夕陽”っていう、ガジェットもとっても素敵。問題点としては、何故、シロンの本を、その辺のもぐりの本屋が持っていたのか判らない……なんてあるけれど、それは瑕疵に思える。(ただ。タイトルは、一考の余地あり。全体的に、ネーミングセンスがちょっと……。)

何故、シロンの本を、その辺のもぐりの本屋が持っていたのか判らないと書いているということは、もしかすると応募作の段階では最後の一章は無かったのかも知れない。この章があるお陰で若干の説明を付け加えるのと同時に話を膨らませてはいるのだが、伏線を張って終わりというのは大賞受賞作だからと気合いを入れて読んでいたこちらの気持ちがすかされたように感じた。腕立て200回をようやく終えたら先輩から、
「がんばったな、じゃあご褒美にあと100回」
と言われたみたいな「マジっすか!」という気持ち。納得行かない感は如何ともしがたい。
あと、ネーミングセンスについては新井素子さんも人のこと言えねーんじゃとは思いつつ、確かになんだこれというネーミングがあるのは俺も感じた。「三毛ボン」ってのは何か元ネタがあるのだろうか。
続編か、もしくは同じ世界を舞台にした本が多分出るんじゃないかという予感がビンビンする。現時点ではもし出たとしてもそれを読むかどうかはちょっと悩む。