『ホラーを書く!』(インタビュー:東雅夫)
読了。図書館で借りた。東雅夫と編集者フカサワが、ホラー小説を書く作家たちの人となり、創作姿勢やその内面に鋭く迫るインタビュー集。登場する作家はあいうえお順に、朝松健・飯田譲治・井上雅彦・小野不由美・菊地秀行・小池真理子・篠田節子・瀬名秀明・皆川博子・森真沙子の10人である。俺が読んだことのある作家は、飯田譲治・井上雅彦・小野不由美・菊地秀行・瀬名秀明の5名しかいない。そもそもホラーというジャンルに思い入れもないのだが、それでも創作秘話や、「ホラー」というジャンルについての各作家の見解の差や、「怖い」ということはどういうことか、そしてそれを小説でどう表現するか、など興味深い話が多くて面白かった。篠田節子の小説を読んでみたいと思わされたりもした。
最初にタイトルを見た時はホラー小説の書き方入門書かと思った。確かにインタビュー中ではホラー小説を書こうとする人へのメッセージを最後に訊いたりもするのだが、それだけである。テクニックの解説などが掲載された実用書ではない。しかしここで語られる内容はホラーに関心のある人なら高い関心を持って読むだろう。もちろん作家志望者にも大いに参考になるに違いない。
で、なんで俺がこの本を読んだかと言えば、巻末の「日本ホラー小説年表」(東雅夫編)に新井素子さんの名前が出て来るのを見つけたからである。まずP.251の「1984年」の項。
新井素子『あなたにここにいて欲しい』/森真沙子『闇のなかの巡礼』/夢枕獏『魔獣狩り』/バーカー『血の本』(〜85)/バンクス『蜂工場』/早川光監督〈アギ 鬼神の怒り〉/クレイブン監督〈エルム街の悪夢〉/ジョーダン監督〈狼の血族〉
次にP.252。「1992年」の項。
新井素子『おしまいの日』/恩田陸『六番目の小夜子』/菊地秀行『東京鬼譚』/倉阪鬼一郎『怪奇十三夜』/小林信彦『ドリーム・ハウス』/宮部みゆき『とり残されて』/O・S・カード『消えた少年たち』/K・ニューマン『ドラキュラ紀元』/モンテルオーニ『聖なる血』/南條竹則編『怪談の悦び』/高田衛編『日本怪談集 江戸編』/飯田譲治監督〈NIGHT HEAD〉放映開始/松村克弥監督〈オールナイトロング〉/コッポラ監督〈ドラキュラ〉
東雅夫は早くから新井素子さんのホラー的素養に着目していた人物である。『あなたにここにいて欲しい』が出版された直後には、『幻想文学』9号で新井素子さんへインタビューを行っており、ホラーの側面から新井素子作品に光を当てている。
上記年表の他、本文中にも一度だけ新井素子さんの名前が登場する。菊地秀行へのインタビュー「異空間にこだわって」のP.115、編集者フカサワが自分の読書歴を語り出す場面。
★「私は一九六七年生まれで小学校時代が筒井さん星さん小松さんで育って、中学高校が菊地さん獏さん大原さん素子さん栗本さん……という世代なんですよ。日本のエンターテインメントが充実していた時代に、すごく幸せな少女時代を過ごして。でもその中でも菊地さんが本当に特別だったのは、まずエッチということが嬉しかったんですよ。(以下略)」
俺より一つ年上か。中学高校の時は俺もまさにそんな感じだったので共感を覚える。
このフカサワ(性別は女性)という編集者はシモネタが好きらしい。小池真理子へのインタビュー時には、その小説が女性読者にとって”使える”と評判である*1、と面と向かって述べており、その身も蓋もなさが非常に面白い。本当に”使える”かどうかは俺は男性の身でもあり小池真理子の小説を読んだこともないのでよく判らない。
- 『ホラーを書く!』(インタビュア:東雅夫),ビレッジセンター出版局,1600円+税,ISBN:4894361280
小学館文庫から文庫版も発売されているようである。そちらも捜してみよう。