講談社X文庫ティーンズハートの小説を読んだ。

『ときめきイチゴ時代』を読み終わった後、妹が残していったティーンズハート本全4冊を読んでみた。うちの妹は本を読まない人間で、彼女が中学生の頃に新井素子さんの文庫本『・・・・・絶句』(上・下)を買い与えたのに何の反応も示さなかったのにはガックリしたものである。どういう経緯でこれらの本が彼女の手元に来たのかは不詳だが、小説を読まない人間でも読んでしまうくらいには彼女の周りで人気があったということだろう。
読んだのは次の4冊である。

『YOKOHAMA 2・14』は花井愛子としては*1ティーンズハートで11冊目の小説である。著者自ら語る通りすごい速さで読めた。これが話し言葉そのままの文体かと言われれば首をひねるしかないのだが、とにかく文章もエピソードもページ数も少ないのですぐに読み終わる。月刊少女漫画雑誌に掲載される読み切り30P一本分の読み応えに近いかも知れない。ページは本編がP.5-213(内イラスト11ページ)、あとがきなどのおまけがP.214-234という構成。よくあるストーリーだしひねりもないし、つまらなくもないが面白くもない、という感想を持った。
折原みとはもともと漫画家で*2、花井愛子の小説にイラストを描いていた時にすすめられてデビューする件は『ときめきイチゴ時代』に登場していた。『夢見るように、愛したい』がティーンズハートでのデビュー作。後の2冊は続編で、「天使」シリーズというシリーズ名が付いている。花井のような極端な変則文体ではなく、一人称「あたし」で読者に話しかけるような口語体は普通に読めるし、よくある話と言ってしまえばそれまでだが物語もけっこう面白い。3回泣きそうになった。やばい。
『夢みるように、愛したい』は本編がP.5-178、あとがき等のおまけがP.179-188。
『天使の降る夜』は本編がP.5-224、おまけがP.225-234。
『エンジェル・ティアーが聴こえる』は本編がP.5-261、おまけがP.262-270。
この人はイラストも全部自分で描いているので、一冊にかかる労力はその分がプラスされる。
確か80年代の終わり頃じゃないかと思うんだが、情報系のテレビ番組で花井愛子ブームが取り上げられたのを見たことがある。ティーンズハートのブームじゃなくて花井愛子のブームとして扱われていた。女子中学生の人たちが「尊敬してます!」とか目をキラキラさせながら言っていた。ブームの終焉については『ときめきイチゴ時代』に詳しい。
折原みとのその後はよく知らないが、6年くらい前だったろうか、俺が本屋でバイトをしていた時にはまだこの人の文庫本は売れていた。amazonで検索してみたら「アナトゥール星伝」シリーズだよ。そうそうこれこれ。昨年末発売の最新刊が本の売り上げランキングで902位ってことは、今でも人気があるようだ。公式ページのプロフィールを見るとすげー色んなことやってるし。おっと、「天使」シリーズにはまだ続編があるようだ。完結編と番外編だと〜。うーむ。どっかの図書館にあれば借りてこようか。

*1:花井愛子の他に浦根絵夢、神戸あやかと3つのペンネームを持ち、ティーンズハートに小説を量産していた。

*2:正式デビューする前か後か判らないが『ファンロード』に漫画がよく掲載されていた。貧乏話とバイト話が書いてあったような記憶が。NHKの『おしん』にエキストラで出演したというエピソードのみ覚えている。