西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』。

読了。次の『週刊ブックレビュー』で書評される本が図書館にあったので借りてみた。私小説であるらしく話としては全く面白くないが、登場するダメ人間な主人公に個人的に嫌なツボを次々と突かれて冷や汗をかいたばかりか動悸息切れ目眩がした。生まれた年が俺と一つしか違わないその人は、さる作家に私淑してその事跡を追っていたり、女性にもてなかったり、定職についておらない身で小ずるく立ち回って周りの者に喰わせてもらっていたり、そのくせ自分の気に入らないことがあると極端な暴力に走ったり、といった立ち居振る舞いをするろくでもない男である。それを客観的に面白がる余裕は俺にはないし共感もしない。ただ開きなおったかのように一人称で語られるその行動には自分の目を引き付けて離さないもの、自分としてなじみ深い感情の流れが確かにあった。目をそらしたくてもそらせない。怖い話である。