読了。書店にて購入。毒島獣太の一人称と途中に挿入される歴史上の出来事が、話の奥行きを深くし更にテンポを高め、物語に加速が付いてきた感のある第10巻である。とは言え、相変わらず終息の気配が微塵もないのは喜んでいいのか悲しんでいいのか判断に困る。あとがきによると、
あと五年はおまたせせずに、『新・魔獣狩り』は完結をむかえることができそうな状態となってきた。
と書いてあるが、この言葉が当てにならないのは夢枕作品のお約束である。
しかしあと五年と言ったら、獏さんはなんと60歳ですよ。『魔獣狩り』の第1巻「淫楽編」が刊行されたのは俺が中学一年の時だった。それから20余年。完結を前に何だか呆然としてしまう。本当に完結したらその時どんな感情に襲われるのか、今から恐ろしくなってしまうのである。
『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』の空海とこの作品に登場する空海は同一人物と考えてもよさそうだ。
もとより、別の物語であり、そうあるべきなのだが、読者が自由な想像をして、そう思っていただくのはむろんかまわない。
うむ。ぜひ二つの作品を重ねて考えることにしよう。
- 『新・魔獣狩り10』(空海編),夢枕獏,祥伝社ノン・ノベル,838円+税,ISBN:4396208227