『KADOKAWAミステリ』2000年5月号。

第20回横溝正史賞の受賞者インタビューが掲載されている。受賞者は小笠原慧(「DZ」)と小川勝己(「葬列」)の二人。俺はミステリを全く読まないのでご両名を知らなかったのだが、小川勝己新井素子作品のファンなんだと。インタビュー中に新井素子さんの名前が登場している。(ご本人のブログ「不毛の日々」で知った。)
本文より抜き書きする。P.13-14より。

――横溝さん以外に影響を受けた作家とか好きな作家さんはいらっしゃいますか?
小川 たくさんいますが、特にということになると、栗本薫さんが好きです。以前、角川から出ていた『バラエティ』とう雑誌で、栗本さんが中島梓名で横溝さんにインタビューしているのを読んでから、『ぼくらの時代』とか『時の石』とか、『絃の聖域』でショックを受けて、こういうのを書きたいなというのが芽生えたんです。そのあと、やはり『バラエティ』の連載エッセイで、新井素子さんのことを知り、読みました。最初に読んだのが『ひとめあなたに…』でこれにもハマりまして、お二人にのめりこんだわけです。新井さんには『ふたりのかつみ』という作品もありますしね。
――それでは、その頃から小説を書き始めた?
小川 小学生の時から書いていましたが、小説らしきものをちゃんと書き始めたのは、九二年です。でも、いざ書いてみようかという段になって、「小説ってどう書けばいいんだ」と悩んでしまったんです。栗本さんと新井さんの作品と古典のSF作品ぐらいしかわからない。それ以外にストックがないんです。それで、昔好きだったミステリは今どうなっているんだろうと思って、ミステリの現状を調べていくのと並行して小説を書き始めたんです。
――例えば、どのような作品をお読みになりましたか。
小川 まず、松本清張さんを読みました。小学校のときに読んだことがあったんですが、そのときは難しくてよくわかりませんでした。ですが、大人になって読んだら面白かったですね。大体の作品を読破してから、森村誠一さんの作品を再読しました。いろいろ読み始めたのはそれ以降なので、現代ミステリに関しては奥手でしたね。例えば、島田荘司さんを知ったのはすごく遅くて、『占星術殺人事件』を読んだのが、九四年です。なにしろ最初は島田荘司さんと島田正彦さんの区別がついてなかったんです(笑)。本当に情けないんですが……。それから、連城三紀彦さんの『夕萩心中』を読みまして、読み終わった時は体が震えました。これは凄いと。それから宮部みゆきさんの作品も好きです。自分の中では神様のような作家がいるんですけども、乱歩、正史、清張というのが三大巨頭ですね。あと現代作家では、栗本さんと新井さんと宮部さんです。ですから、このお三方とはあまり会いたくないんです(笑)。信者は軽々と神様と会っちゃいかんですよ。

P.15より。

――横溝賞を受賞されて、今後の作品を書いていくことになりますが、どのようなものを書いていきたいですか。
小川 自分としてはミステリ作家になりたかったので、広い意味でのミステリを書いていきたいですね。
――具体的には?
小川 わかりません。「わからないから書いている」という気持ちもありますし。ただ、よく考えてみれば自分がのめりこんだ作家さんというのは、栗本さんや新井さんや宮部さんなので……。
――みなさん、いろいろなジャンルの作品を書かれていますよね。
小川 島田さんや連城さんもいろんなものを書かれていますし。そいうふうになれたら、と思いますが……。

素研内を調べてみたら、『小説すばる』2006年1月号の「犬にまつわるショートショート」で新井素子さんと競作しているではないか。申し訳ない、全然覚えていなかった。おまけに名前を間違えて掲載していたことが判明して、あわてて修正した。大変失礼致しました。