『扉を開けて』新装版、本日発売。

隣町の本屋で購入。表紙イラストと挿し絵を羽海野チカが描いている。表紙の色づかいがインパクトに欠ける気がしないでもないが、ネコ+ライオンという『扉を開けて』表紙イラストの伝統(?)に則ったなかなかいい絵だと思う。個人的には好みだ。半裸のディミダ姫が気になるんですけど。帯が掛かった状態だと杳ちゃんの顔が隠れてしまうのがちともったいない。
カバーの折り返しに「新装版近刊予定」として『あたしの中の……』と『いつか猫になる日まで』の名前があったのには驚いた。いつ出るんだろう。『いつか猫になる日まで』が新装版で出るのはうれしいな。昔好きだった女の子とクラス会で久々に会うような感じ。昔の面影を思い出しながらもどんな風に変わってるんだか楽しみっていうか。書いていて赤面する。
以下、新しい「あとがき」を読んで思ったことなど。
もしかして、「第13あかねマンション物語」を「コバルト」で再開、なんて話が聞けるかと密かに期待していたんだが、残念ながらなかった。「SF Japan」が全然出ないから、連作短編と銘打っていたあのお話も発表する場がないんではないか、と心配しているのである。
それから、『扉を開けて』と関係のある作品を新井素子さんがコマーシャルしている。この5冊である。

んがしかし、これらは全て絶版か在庫切れである。『二分割幽霊綺譚』は電子ブック版が発売されているが、これとてPCかPDAを持っていない人は読めまい。とすると、読みたければ古本屋へ駆け込むしかない、となる。とりあえずamazonでもネットの古本屋でも買えるものの、古本だと作者への実入りは一銭もないんだよな。本の安定供給ってできないもんなんですかね。
あと、作中で「おたく」という二人称を使うのをやめてしまったことに軽い衝撃を受けた。俺は実生活では「おたく」という二人称を使わない人間だが、新井素子の作品内においては「あんた」でも「おまえ」でもない「おたく」という言葉の持つ軽さが作風に微妙にマッチしていたと思うのである。「今だと、なあんか、ニュアンスが違ってきちゃってる」というのはよく解る話なので異存はない。ただ、俺が感じていたあの時代の空気はもうとっくに過去のものになってしまっていたんだな、ということを強烈に認識させられた出来事だった。