新聞記事に新井素子さんの名前。

NHK教育で放送された「YOU」の新井素子さん出演の回をチェックするには放送リストを作成しないといかんかなあと思い、調査のために図書館に行った。朝日新聞の縮刷版で放送開始日からテレビ番組欄を見始めたのだが、途中で夕刊にSF関連の記事が掲載されていることに気付いてそちらを読み始めてしまった。
記事のタイトルは「日本の文化地図」。シリーズもので、当時の日本文化について考察する連載コラムのようである。「YOU」の放送が始まった1982年4月には「未来の王国」と題して日本SFの現状を編集委員百目鬼恭三郎が執筆している。「科学小説」であるSFが科学技術の進歩から取り残されて本来の姿を失ったという現状認識をまず示し、SFが現在どんな姿をとっているのか、そしてその後の方向性についても触れるといった内容である。各回のタイトルと掲載日は次の通り。

  1. 宇宙から落ちたSF(1982/04/19)
  2. 繁盛する劇画風SF(1982/04/20)
  3. SFと純文学の接近(1982/04/22)
  4. 科学者の書くSFへ(1982/04/23)

最終回である第4回に新井素子さんの名前が登場している。

 前回まで、SFが、ヒロイック・ファンタジーとスペキュラティブ・フィクション、の両極に分かれつつあることを紹介してきたが、むろん、その中間にはまださまざまな種類のSFがあって、活動をつづけている。

 たとえば、話の意外性と笑いの中に人間の愚かさに対する諷刺をこめる、といった種類のSFは、あい変わらず日本では主流を成していて、最長老の星新一から、三十代のかんべ・むさし、二十代の新井素子まで、多くの作家が活躍している。現在も、中学生にもっとも人気のあるのは、星と筒井康隆だそうだから、今後ともこの分野は繁盛しつづけるだろう。

著者が新井素子さんを星新一かんべむさしと同系列に位置づけているのは興味深い。「諷刺」という要素は新井素子さんの作中にはほとんど見られないような気がしたのだが、考えてみればデビュー作である「あたしの中の……」が平井和正の「人類ダメ小説」の影響下にあったことは新井素子さん自身が語っておられるのだった。他にも「大きな壁の中と外」や「週に一度のお食事を」などに「諷刺」という要素は見られるように思う。