『Newtype』1986年5月号。

言わずと知れた角川書店が発行するアニメ専門誌である。新井素子さんの関連記事が掲載されていたのを知ったのはこちらのブログ。

『ノベルズ畑でアニメがとれた!!』という特集が組まれており、その中に新井素子さんの談話が掲載されている。特集ページの冒頭にはこのような文章がある。

最近、本屋さんの文庫本のコーナーを見るとはなしに見ていると、アニメーターさんやマンガ家さんの絵のついたカバーを多く見かけるようになりました。
アニメやマンガに親近感を感じるニュータイプにとっては、小説(ノベルズ)の世界が急に近づいてきたような昨今です。カバーイラストや挿絵に魅かれて、ノベルズを手にしたニュータイプも、決して少なくないはずです。
さらに、今年の夏には、そうしたニュータイプ・ノベルズの中のひとつ「魔女でもステディ」(早川書房)がO・V・Aとなることが決定しました。こうなると、ニュータイプとしては黙ってはいられません。いったいこのムーブメントがどこから起こり、どこへいくのかを確かめようではありませんか。
このムーブメントの起こりは、今から10年前。
高千穂遙さんが自作の小説「クラッシャージョウ」に、安彦良和さんのイラストをプロデュースしたのがきっかけとなりました。ご存じのように「クラッシャージョウ」はベストセラーとなり、昭和58年には作者自らのシナリオ、安彦さんのキャラクター&監督でアニメ映画にもなりました。
これを追うようにして、角川アニメが「幻魔大戦」「少年ケニヤ」「カムイの剣」「ボビーに首ったけ」と、続々とノベルズのアニメ化に挑みました。ひと昔前までファンの間で夢だった「SF小説やジュニア小説のアニメ化」という希望は、挿絵のキャラクターをそのままアニメキャラクターに転用する――という発想によって、現実のものとなったのです。
生まれた時からアニメやマンガなど、映像的な表現に深くかかわっているニュータイプにとって、読むだけでキャラクターを頭の中で動かすことのできるニュータイプ・ノベルズは、とても接しやすいノベルズの世界です。こうしたノベルズを求めるブームは、一時的な現象ではなく、これからも新しい世代に対応して、定着してゆくことでしょう。
今回の特集では「魔女でもステディ」を中心に、各証言者の声を聞きながら、ニュータイプ・ノベルズの現代と未来を考えています。
あなたの好きなノベルズがアニメ化される日も、そう遠いことではないかもしれません。ノベルズ畑でとれたアニメの味は、甘いかにがいか、確かめてみてはいかが?

ニュータイプ・ノベルズ」てすごく思い当たる節があるんだけど。角川書店がこの時期に自覚的にこのような傾向の小説の特集を組んでいた、というのが2009年現在から見ると興味深いかも。この年から、角川文庫ではこの特集で規定された「ニュータイプ・ノベルズ」を集めた(と思われる)「ファンタジー・フェア」*1が開催されるようになり、1988年1989年のスニーカー文庫創刊へと繋がっていく。――という流れも想定できるかも。
閑話休題
で、証言者が6人登場する。アニメ界出身のイラストレーターとして天野喜孝高田明美いのまたむつみ。アニメに親和性が高い作家という括りで高千穂遙、鳴海丈、藤川桂介新井素子。それぞれ談話が掲載されている。この「ニュータイプ・ノベルズ」のような風潮について、新井素子さんは次のように語っている。

昔は、マンガ家の人が挿絵を描いてるとしても、マンガの線じゃない線で書いてるから、あまり印象になかったんですよ。もんきー♥ぱんち先生が「テクニカラー・タイムマシン」でマンガそのままの絵で描いていて、すごく目立っていましたね。挿絵の印象がすごく強いと、それがそのままアニメになる場合ってあると思いますよ。本当は、小説って中身が99%で、絵が1%くらいなのが、マッチしちゃうとそれが50%くらいになりますもんね。そうなると、アニメになるとしても、そのキャラクターをはずすわけにはいかないでしょうね。たとえば「クラッシャージョウ」は、安彦さんの絵以外では考えられないし、生頼さん以外の「ウルフガイ」だったら怒ると思います。私自身のことを言えば、どんな挿絵がつくとか、アニメになる、映画になるとかは気にしてないんです。アニメになれば、それはアニメ屋さんの作品だし、映画は映画作った人の作品だし、手を離れちゃうんですから。結果として好みだったら「わーいわーい」。好みじゃなかったら「ふーん」という程度です。

テクニカラー・タイムマシン』はハリイ・ハリスンの書いたSFで、モンキー・パンチが表紙イラストを描いていた。*2こんな作品がすっと出てくる辺り、海外SFもそれなりに読んでいることを想像させる。「ウルフガイ」の生頼範義イラストにはやはり相当な思い入れがあるようだ。*3
ちなみに『扉を開けて』のアニメ映画が公開されたのはこの年の11月のことである。

*1:ラインナップはこちらを参照のこと。→http://alisato.web2.jp/diary/l200204-02.htm 新井素子さんの『結婚物語』が入っている。

*2:amazonの商品ページに表紙画像あり。ISBN:4150101930←ここから飛んで下さい。談話中の表記がなぜひらがなにハートマークなのかは謎。

*3:http://motoken.na.coocan.jp/kanren/novel/ookamiot.htmlを「生頼」で検索して下さい。