2014年11月の読書記録

読んだ本の数:21冊

おにのさうし (文春文庫)

「染殿の后鬼のため嬈乱せらるる物語」「紀長谷雄朱雀門にて女を争い鬼と双六をする物語」「篁物語」の三編を収録。いずれも男女が濃密に情を交わす場面が登場しその故に切なさが込み上げる。こんな獏さんは久しぶりだと懐かしい感じがした。「篁物語」の道摩法師の無法っぷりがいい。なるほど『陰陽師』の外伝的。
読了日:11月29日 著者:夢枕獏

テツぼん (11) (ビッグコミックススペシャル)

自分の鉄道趣味を追求すると何故か社会に貢献する政策に結びつくという、のほほん鉄オタ国会議員の主人公・仙露鉄男。この巻では父親から引き継いだ地盤を捨てて静岡選挙区にまさかの国替え。理由はローカル私鉄に乗りたくて(笑)。静岡県は原作の高橋遠州の地元でもあり県内の鉄道会社や路線が次々に登場する。静岡鉄道・遠州鉄道天竜浜名湖鉄道東海道線清水港線伊豆箱根鉄道駿豆線御殿場線身延線大井川鐵道飯田線。鉄道を通して静岡県の今とこれからを考えるという視点が新鮮で楽しい。
ちなみに表紙の写真は放送中のTVドラマ『ごめんね青春!』でもおなじみの伊豆箱根鉄道駿豆線である。
読了日:11月28日 著者:永松潔(画)・高橋遠州(原作)

雄飛 (2) (ビッグコミックス)

市井の人間一人一人が必死で生きている感じが伝わってくるのがいい。彼らがこの先どうなっていくのかが気になるので続けて読む。
読了日:11月28日 著者:小山ゆう

雄飛 ゆうひ 2 (2) (ビッグコミックス)

雄飛 ゆうひ 2 (2) (ビッグコミックス)

3月のライオン (10) [BUMP OF CHICKEN]CD付特装版 (ジェッツコミックス)

零くんGOGO! と思いました。
読了日:11月27日 著者:羽海野チカ

ヘルベチカスタンダード 絵 (カドカワコミックスA)

ヘルベチカスタンダードの42から75と「日常」関連のイラストやそれ以外のイラストなどを収録。あらゐけいいちの絵はなんだか好きだ。えんどうまもるは「イナズマイレブン」の主人公の名前。そしてなぜ布啓一郎
読了日:11月24日 著者:あらゐけいいち

チョッキン 完全版 (1)

新井素子さんのコメントが帯に掲載されているという情報を得て購入。大きく「新井素子氏推薦!」の文字が。新井素子さんは当時読んでいたのかそれとも初めて読んだんだろうか、気になる。内容は面白かった。この金銭への執着は不景気な90年代以降の日本では決して笑えないとか思ってしまった。
この巻に収録されている単行本未収録作「主役が50人!?」の回は読んだ記憶がある。本誌で読んだのかと思ったが、「倉田わたるのミクロコスモス」でチェックしたら『ハイパードール』に収録されたので厳密には単行本未収録作ではない、とのこと。もしかしたらそっちで読んだのかも知れない。
読了日:11月24日 著者:吾妻ひでお

チョッキン 完全版 1

チョッキン 完全版 1

鬼灯の冷徹 (16) (モーニング KC)

1ページ目の鬼灯の台詞「特定の食べ物を食べること前提に一日働いてるとなかった時気持ちの方が消化できない」てホントそうだわ、と思った。それ食べるために今日は頑張ったのに〜〜〜みたいな。座敷童子ちゃんたちが相変わらず不気味かわいい。つや消しの黒目。
読了日:11月23日 著者:江口夏実

鬼灯の冷徹(16) (モーニング KC)

鬼灯の冷徹(16) (モーニング KC)

陰陽師 螢火ノ巻

2冊連続で未読の『陰陽師』を読むというのはかつて経験したことがなかったのでとても新鮮でありまた楽しかった。浸る。道満どのの短編が増えてきたのもよしよしという感じ。この流れでこないだ文春文庫から出た姉妹編(のようなもの)である『おにのさうし』も読んでしまおう。
読了日:11月23日 著者:夢枕獏

陰陽師 螢火ノ巻

陰陽師 螢火ノ巻

新世紀エヴァンゲリオン (14) プレミアム限定版 (カドカワコミックスA)

終わりましたなあ。20年か。しんみりした。
読了日:11月20日 著者:貞本義行

陰陽師 蒼猴ノ巻

買い忘れている内に次の巻が出てしまいちょっと慌てて手に取ったんだが読み始めればずっぷしとその世界に浸り込み逸る心など何処かへ去ってしまうのだった。相変わらず良い。いつもは超然としている晴明の心が揺れ動く様が見られるのは珍しいと思った。あと道満どのは実に底が知れない。
読了日:11月20日 著者:夢枕獏

陰陽師 蒼猴ノ巻

陰陽師 蒼猴ノ巻

江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書)

江戸しぐさ」については、たまにTLに批判的なツイートが流れて来るな、くらいの認識しかなく、どんなものか全く知らなかったんだが、『江戸しぐさの正体』の書評を読んでその怪しげな知識が学教教育の現場でも教えられるようになった、という現状と理由に興味を持ち、手に取ってみた。歴史捏造の経緯や広まっていく過程が面白かった。「コンサルタント業界はオカルトと相性がよ」いというのも改めて納得した。大抵の人にとっては論理的整合性とか歴史的正当性なんてのはどうでもよく、自分にとって都合のよい理屈を広めたりそれに塗れたりする欲求が優先される。
一つ腑に落ちない点がある。”第二章 検証「江戸しぐさ」 パラレルワールドの中の江戸”のP.81「心に肥やしを撒く?」の項、「お心肥」(おしんこやし)という言葉のおかしな処を挙げていくのだが、江戸では「肥やし」と言えば「人糞尿」を指しそんな語感の悪い(と著者は言う)言葉を「江戸っ子」が使う訳がない、とのことである。確かに「人糞尿」は代表的な肥料だったんだろうが、「肥やし」は肥料一般も指す言葉だし「肥」(こえ)や「下肥」(しもごえ)なんて言葉もある中で「肥やし」=「人糞尿」と断言するだけの判断材料は提示されておらず、そこが牽強付会に思えて納得しがたい。「語感が悪い」なんていう、諸条件で左右されがちな個別の感覚を理由として提示されるのものもやはり納得しがたい。詰まる処、「肥やし」=「人糞尿」=「語感が悪い」の=の処の相関関係が本文から読み取れないので説得されなかった。まあ、この辺り納得しがたいのは俺の無知に起因しそうな気も多分にするけれどもね。
読了日:11月19日 著者:原田実

未来へ……

よかった。最後の辺りを読んでいて涙が流れてきた。感動、と言うのともちょっと違う、なんというか、そこから感じられる目線の強さ、確かさ、暖かさ、に胸を打たれる、というか。初めて読んだ時から全然ぶれていない新井素子がそこにいた、という感じ。『ランティエ』連載用の新作を構想中に東日本大震災が発生、その後「読んだ人がニコッとできるような明るい話を書きたい」と構想を練り直して執筆されたのが本作『未来へ……』なんだけれども、こんなに脳天気で、こんなに読んだ者に前へ進む力を与えてくれる物語になるとは。
今更俺が言うようなことじゃないけど、新井素子すごいね。こんな話を書く人はたぶん他にいないと思うので、新井素子ファンはもちろんファンじゃない人も読めばいいと思う。『未来へ……』、猛烈におすすめしたい。
読了日:11月17日 著者:新井素子

未来へ・・・・・・

未来へ・・・・・・

想像ラジオ

第2回静岡書店大賞【小説部門】受賞作。でなければたぶん自発的には手に取らない種類の本である。感想を言葉にするのが難しい。じゃあ読んで後悔したかっていうとむしろ逆で、書店員・図書館員の皆さんが薦める気持ちは判ったんじゃないか、と思う。ちょっと読んでみて欲しい。想像しよう。
読了日:11月12日 著者:いとうせいこう

想像ラジオ

想像ラジオ

書店ガール 3 (PHP文芸文庫)

書店で働く人々を描いた『書店ガール』も3巻目と好調である。身につまされることも相変わらず多いけれどもやっぱり読むと少し元気が出るのだった。最後の1ページに泣いた。この巻では東日本大震災から3年経った今の世情が大きく取り上げられている。人の思いを風化させないため、そしてこれからのために主人公たちが取り組んだフェアがとても素敵だと思った。「託された一冊」というサブタイトルの重みを読み終わった後に噛みしめる。
読了日:11月11日 著者:碧野圭

書店ガール 3 (PHP文芸文庫)

書店ガール 3 (PHP文芸文庫)

売国妃シルヴィア (グイン・サーガ134巻/ハヤカワ文庫JA)

ケイロニア編も嫌な感じに盛り上がってきた。破滅は予告されているとは言えこうしてだんだん現実のものとして現れてくると心が痛む。最後の一文はどういうこと!? 続きが非常に気になる。続刊をなるべく早くお願いします。豹の旦那も気が休まる暇がねーな。
読了日:11月10日 著者:宵野ゆめ

売国妃シルヴィア (グイン・サーガ134巻)

売国妃シルヴィア (グイン・サーガ134巻)

宿命の宝冠 (グイン・サーガ外伝25巻/ハヤカワ文庫JA)

刊行は昨年だが読んでおらず、正編134巻『売国妃シルヴィア』にこちらの登場人物が出てきたので一旦中断し慌てて読み始めた次第。文章がくどくどしい割に具体性に欠けていたりとえらい読みにくかったが話は面白かった。この話の後に書かれた正編132巻『サイロンの挽歌』ではそこまで読みにくいとは思わなかったので、作者さんも鍛錬を積まれているのかも知れない。話に決着は付いていないんだがそれは『売国妃シルヴィア』の方で語られるのだろうか。読むのがますます楽しみになってきた。
読了日:11月7日 著者:宵野ゆめ

宿命の宝冠 (ハヤカワ文庫JA)

宿命の宝冠 (ハヤカワ文庫JA)

栞と紙魚子 新装版 (1) (Nemuki+コミックス)

読むのは初めてである。怪奇な事件に背筋がゾクゾクしつつ奇妙なユーモアにあふれているのが可笑しくて読んでいてくすくす笑ってしまう。楽しい。クトゥルー神話は全然読んだことないけど読んでたらもっと笑えるのかなあ。元ネタはなんとなく判るんだけどね。クトゥルー関連の小説て栗本薫の『魔界水滸伝』『魔境遊撃隊』、菊地秀行の『妖神グルメ』、風見潤の「クトゥルー・オペラ」シリーズくらいしか読んだことない。
尚、この新装版は4ヶ月連続刊行の全4巻、各巻に「描きおろし新作読み切り」が収録されるとのこと。第1巻には「その後の生首事件」を収録。ちなみに諸星大二郎の「あとがき」によると、文庫版は単行本版の途中までしか収録されなかったがこの新装版には全て収録される、とのこと。

読了日:11月7日 著者:諸星大二郎

新装版 栞と紙魚子1 (Nemuki+コミックス)

新装版 栞と紙魚子1 (Nemuki+コミックス)

なぎさ食堂 (1) (バンブーコミックス)

『ねこのこはな』の作者さんによる、女子高生三人娘が美味しい料理を美味しく頂く4コマ漫画。ほわほわな雰囲気とキャラのすっとぼけ具合に微笑が止まらない。出て来る料理が食べたくなる。そう言えばのり弁も久しく食ってないなあ。
♪これっくらいのおべんとば〜こに の歌も地方ごとのバリエーションがあるらしい。なぎさちゃんが歌ってる「きざーみしょうがにごまふりかけて にんじんさん さんしょうさん」の処、うちの方では 「きざーみしょうがにごましおふって にんじんさん ごぼうさん」だった。2・3・4・5と続いて数え歌みたいになってたのか。
読了日:11月7日 著者:藤沢カミヤ

なぎさ食堂 1 (バンブーコミックス)

なぎさ食堂 1 (バンブーコミックス)

図書館戦争 LOVE&WAR (14) (花とゆめコミックス)

涙無くしては読めないところに差し掛かっていてページをめくる度にぼろぼろ泣く訳です。ストーリーは全て把握してるのに! 山場であります。次巻が最終巻?
東京での逃避行の最中に応援してくれてる人たちが手を貸してくれる処が特に泣ける。『通りすがりのレイディ』でテレビの生放送をジャックしたあゆみちゃんに対して飼育された子供たちの衝撃的な映像を見て憤った人々の支援が広がっていった、という場面をなんとなく思い出した。あそこも泣ける。
読了日:11月6日 著者:弓きいろ

図書館戦争 LOVE&WAR 14 (花とゆめCOMICS)

図書館戦争 LOVE&WAR 14 (花とゆめCOMICS)

戦後の講談社東都書房 (出版人に聞く)

今年90歳となった出版芸術社会長の原田裕氏が、タイトルの通り戦後の講談社講談社内の別名義会社として立ち上げられた東都書房について語る。東都書房のことは俺は不勉強にして知らなかったが、戦後のミステリー出版に多大な貢献を果たした出版社で原田氏は編集者として大活躍したらしい。
その創立メンバーの中に新井素子さんの母方の祖父である中里辰男氏の名前を発見して驚いた。中里氏についてはやはり講談社社員であった娘・壽江氏(新井素子さんの母上)がインタビュー「講談社一族として40年」(『小松左京マガジン』第17号掲載)の中で語っているが*1、合わせて貴重な証言である。中里辰男氏は新井素子さんの母方の祖父だけど、同じく講談社の社員だった父方の祖父・新井武助氏のこともきっとご存知なんでしょうなあ。こちらは名前は出て来てない。
ちなみに、本書には新井素子さんとその父上(こちらも元講談社社員)の名前もちらっと出て来る。この辺り、もっと深く伺いたいものである。それは別にしても戦後の出版状況についての話は非常に興味深く、特に山岡荘八徳川家康』の出版にまつわる件は意外の感に打たれて面白かった。
関連ツイートも貼っておく。




読了日:11月3日 著者:原田裕

ルパン三世 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

素研の研究課題だった原作の『ルパン三世』を読み始める。アニメ第2期よりだいぶんハードでドライでエロティックでナンセンスで人を喰った内容。アニメ第1期は原作の雰囲気に近いようで「脱獄」や「魔術師」などアニメ化されたエピソードも収録されている。面白い。文庫なので絵が小さいためかキャラの見分けがつきにくくまたコマ運びの独特な調子もあってとっつきにくかった。中学生の頃に本屋でタダ読みしようとした時にも戸惑いを覚えて読むのをやめた記憶がある。が、もう慣れた、と思う。とりあえず『新・』の前の全10巻をぼちぼち読んでみようと思う。
読了日:11月2日 著者:モンキー・パンチ

ルパン三世 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

ルパン三世 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

*1:このインタビューによると中里辰男氏は『キング』の編集長として定年を迎えたとのことだった。東都書房設立後に再び『キング』の編集長となったのか、それとも定年後に設立に参加したのかは不明。

2014年10月の読書記録

読んだ本の数:17冊

廃線上のアリス (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)

「青春だね」と言いたくなるほろ苦さと甘酸っぱさの感じられるいいラストシーンだった。「理性が感情をおさえられなくなったら、その時は感情に従いなさい」という格言もあるし、思いに任せて突き進むが吉なのだ、きっと。
『スノーグース』と『月と六ペンス』を読んでからもういっぺん読んでみようと思っている。
読了日:10月31日 著者:マサト真希

ドミトリーともきんす

不思議な学生寮「ともきんす」の二階には朝永振一郎牧野富太郎中谷宇吉郎湯川秀樹という四人の学生さんが住んでいる。彼らの人物像やその業績を寮母さんとその小さな娘さんとの交流する姿で表現しつつ彼らの著作が紹介される。なんとも不思議な味わい。そして紹介された本が読みたくなる。
読了日:10月28日 著者:高野文子

ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす

ドリフターズ (4) (ヤングキングコミックス)

人間のモラルとかルールとかの小賢しさをものともしない身も蓋もなさが相変わらず痛快である。ライバル関係にある二人が敵味方で登場するのは初であるか? 三百年の時を隔てたライバル関係が直接相打つ展開は痺れた。
読了日:10月27日 著者:平野耕太

ハルロック (2) (モーニングKC)

相変わらず面白い。メェメェ鳴きながら近づいてくる集団が怖すぎて笑える。
読了日:10月27日 著者:西餅

ハルロック(2) (モーニング KC)

ハルロック(2) (モーニング KC)

関連して『日経Linux』2014年11月号も注目なのだった。
日経 Linux (リナックス) 2014年 11月号

日経 Linux (リナックス) 2014年 11月号

ねこのこはな (2) (モーニングKC)

相変わらずこはなが破滅的にかわいいのでみんな読むといいのだ。めざせ星雲賞
「金長まんじゅう」は阿波銘菓だって。あっちゃんの実家は徳島なのか。
(関連リンク→『ねこのこはな』のサブタイトルの元となったSF小説。
読了日:10月26日 著者:藤沢カミヤ

ねこのこはな(2) (モーニング KC)

ねこのこはな(2) (モーニング KC)

GIANT KILLING (33) (モーニングKC)

この試合にはプロサッカーの怖さ、絶望、希望、ダイナミズム、意外性、愉悦、歓喜、など全ての醍醐味が詰まっている。28巻ぐらいからずっと続く高揚感が最高潮に達した感がありつつ、しかしまだまだこの先があるのだった。彼らは高みに届くのか。届くために何をするのか。目が離せない。
読了日:10月26日 著者:ツジトモ

GIANT KILLING(33) (モーニング KC)

GIANT KILLING(33) (モーニング KC)

銀婚式物語 (中公文庫)

再読、てか再再読、かな? 神の視点ではなく登場人物である陽子さんに寄り添って読んでみたが泣いて笑ってとても楽しい時間を過ごすことができた。陽子さんの粗忽ぶりが、年上の人に言うのも失礼だが、可愛らしくて仕方がない。え、なんでそういう方向へ行っちゃうかな!? と度々突っ込みたくなる。で、文庫版あとがきを読んでびっくりですよ。あとがきが、という話はツイートで教えて頂いたり目にしてたりしてたんだが、そうですか、もちろん熱烈に待ちますよ! でも最初に上がってるタイトルの方は自分もいずれそういう立場になるのが判っているだけにちょっと読むの怖いような。
そう言えば『イン・ザ・ヘブン』もそうだったけど、あとがきを「書き下ろしエッセイ」と呼ぶ風潮ができつつありますか。販売施策としての付加価値アピールなのかな? 心情的にはあくまでも「あとがき」とは作品に付随するものであって、エッセイと言われてもピンと来ない。そのままの言葉は使えないのだろうか。それで買ってくれる人が一人でも増えるなら文言は別にどうでもいい、とは思うが、エッセイが収録されてるのか、と期待して読んでみたらあとがきだった、というがっかり感はちょっと怖い。まあ、ファンにとっては新しいあとがきが付いてると言った方がうれしいよね、と思ってブログなどにもそう書いている。
読了日:10月26日 著者:新井素子

銀婚式物語 (中公文庫)

銀婚式物語 (中公文庫)

本陣殺人事件 (角川文庫)

金田一耕助ファイル〉シリーズ第2巻。金田一耕助が初登場する「本陣殺人事件」の他、「車井戸はなぜ軋る」、「黒猫亭事件」の3編を収録。テレビドラマ版よりミステリ色が濃い。ミステリは苦手だが楽しく読めたのは金田一耕助という人物に興味が湧いたためだと思われるので他の作品も読んでみたい。
ルパン三世の内股に偶然にもほくろがあったら五エ門はどうしたんだろうか、と「車井戸はなぜ軋る」を読んだ後思った。あんまり関係ない。)
読了日:10月20日 著者:横溝正史

本陣殺人事件 (角川文庫)

本陣殺人事件 (角川文庫)

静岡放送テレビ番組制作の舞台裏 (このプロジェクトを追え!シリーズ)

「このプロジェクトを追え!」は、小学校高学年以上向けのノンフィクションシリーズ。これまでサンシャイン水族館、成田空港、日本気象協会などを取り上げてきたが、第8弾となる本書では静岡県の放送局「静岡放送(SBS)」の番組制作の舞台裏に焦点を当て、現場のスタッフに取材を行った。登場するのは、プロデューサー、ディレクター、キャスター、社会部記者、カメラマン、スポーツ担当ディレクター、ラジオ局編成制作部部長の7名。その仕事内容と各人の仕事への取組み方を筆者が聞き率直な感想を記している。子ども向けの本なので読みやすい上、番組がどのように作られているのかなど初めて知ることばかりで、とても面白かった。鈴木通代アナて今ラジオ局編成制作部部長なのな。入社ほやほやでSBS歌謡ベストテンに出てた印象が強すぎて自分の中でものすごいギャップ。
サッカー好きの人は第6章の”大編成のスタッフで「Jリーグ」開幕戦を生中継!”をぜひ読んで欲しい。今年のジュビロ磐田のホーム開幕戦中継の様子が描かれている。担当ディレクター氏は昨年11月10日のサガン鳥栖vsジュビロ磐田戦、磐田のJ2降格が決定してしまったあの試合にもニュース映像の撮影のため現地に行っていたそうで、何をどう撮るかの話が実に興味深かった。この日も磐田は負けてしまい、それがこの本に記録されることとなったのは残念である。
興味のある向きは児童書コーナーへどうぞ。
読了日:10月18日 著者:深光富士男

ちはやふる (26) (BELOVE KC)

太一の復活を待つ。
読了日:10月13日 著者:末次由紀

ちはやふる(26) (BE LOVE KC)

ちはやふる(26) (BE LOVE KC)

突変 (徳間文庫)

面白かった。本編725ページと文庫としては超ぶ厚いが読み出すとなかなか途中でやめられなくなって困る程。特異な災害に巻き込まれた町を描いたSFで、巧みな人物描写と緻密な設定に乗せられてこの先どうなっちゃうのとハラハラしながら読み進むと終わりの方でちょっとホロッとする、という。これはおすすめだなあ。解説で大森望がべた褒めしてるけど同感だ。何の予備知識がなくても話にするっと入っていけるし読みやすいんで途中から本の厚さなんて全然気にならなくなるし。来年のSSTまで覚えとく。
この話だけでも充分楽しんだし満足したけれども、この続きでもう一冊くらいあってもバチは当たらないと思う。
読了日:10月9日 著者:森岡浩之

突変 (徳間文庫)

突変 (徳間文庫)

門島 (角川文庫)

新井素子書店で購入した新井素子さん推薦図書。映画版は見たことがありストーリーを知っていたので素直に楽しめるだろうかと少し警戒していたが、細部が異なっているという驚きもあって、語り聞かせるような軽快な文章にのせられて次々にページを捲ってしまった。面白かった。犯人の妄念が恐ろしい。
金田一さんは思い込み激しすぎで常に後手後手に回る。犯行を防ぐ、というだけなら色々手は打てたんじゃないかと思うんだが、ずぶずぶと泥沼に嵌り込んでいく様は、実は何か起こるのを期待しているんではないか、犯罪に魅せられているんではないか、というような不健全さを感じてしまった。隔絶された孤島、排他的な共同体、入り組んだ人間関係、狭間から噴出する狂気、これらを背景に展開する血なまぐさい事件を読み解く人物としてはまさにうってつけだよな、金田一さんて。映画版で常に傍観者ぽいけど、こっちではずっと懊悩していて人間臭いのもいい。
読んでいるとやたら前作『本陣殺人事件』の話題が出て来るのでそちらも無性に気になるのだった。帰りに買おうと思ったら在庫なし。注文せずばなるまい。横溝正史で他に読んだことがあるのは『八つ墓村』と『犬神家の一族』だけ。〈金田一耕助ファイル〉シリーズ、読みたくなるねえ。
(そう言えば新井素子さんの旦那さんは岡山出身で、そのご両親は津山の方の出身、なんだっけ? こういう繋がりもあるんだったよな。すぐ忘れるけど。因みに、『獄門島』は週刊文春の「東西ミステリーベスト100」で1985年の時も2012年の時も連続して1位に選ばれているらしい。→Wikipedia|東西ミステリーベスト100
読了日:10月6日 著者:横溝正史

獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

知ろうとすること。 (新潮文庫)

正確な知識を得ようとすることは大事。しかし正しさを人に押し付けないことも大事。相手を無理なく納得させることの難しさを痛感。科学的には必要のない機械、と判っていながらベビースキャンを稼働させるなどの思い切った取り組みはそのために必要なんだとか。
P.150-151にこうある。

端的に言えば、自分が研究したり、発言したりする分野において、過去に何が起きて、いまどこまでがわかっていて、どこからがわかってないかというようなことは、勉強しなくちゃいけない。それは必須です。

これは常に意識しなくちゃいけない。
この本いいこと書いてあるし読みやすいから中学生とか高校生とか大学生とか学生さんたちに読んでもらいたいな。もちろん放射能に対して不安を抱える大人にも。
読了日:10月5日 著者:早野龍五,糸井重里

知ろうとすること。 (新潮文庫)

知ろうとすること。 (新潮文庫)

五時間目の戦争 (1) (カドカワコミックスA)

ノーチェックだったんだがちらっと読んで衝撃を受けたんで思わず買った。辛い。もう嫌な予感しかしなくて先を読むのが辛い。ここに描かれているのは一体どういう状況なのか。そして彼ら彼女らはこの先どうなっていくのか。続きを期待。作者は『おおかみこどもの雨と雪』のコミカライズを担当した人。
島から見ると四国が本土なのか。そして道後温泉が……。
読了日:10月3日 著者:優

雄飛 (1) (ビッグコミックス)

小山ゆうの待望の新作。日本の敗戦から戦後を舞台に過酷な宿命を自ら背負った一人の若者と一人の少女の生き様を描く。スペリオールでの連載で読んではいたが、まとめて読むと胸がつぶれる思いがする。彼らの辿り着く先は、果たして。
読了日:10月1日 著者:小山ゆう

雄飛 ゆうひ 1 (1) (ビッグコミックス)

雄飛 ゆうひ 1 (1) (ビッグコミックス)

子供はわかってあげない (上・下) (モーニングKC)

モーニングで連載中から好きだったがまとめて読むと伏線に気付いたりしてもっと楽しめた。あー青臭い甘酸っぱいだがそこがいい。登場人物たちの造形とか会話とか話とかページの進行とかがとても快いのでみんな読むべき。言葉のチョイスがいちいちいいのよな。絵も好き。とりあえず店頭で売らんとしてみる。
読了日:10月1日 著者:田島列島

『ねこのこはな』のサブタイトルの元となったSF小説。

『ねこのこはな』は売れないSF作家のあっちゃんとその飼い猫「こはな」のほのぼの日常生活を描いた漫画である。こはながかわいい。

ねこのこはな 1 (モーニング KC)

ねこのこはな 1 (モーニング KC)

ねこのこはな(2) (モーニング KC)

ねこのこはな(2) (モーニング KC)

第2巻の発売を記念して第1巻収録作のサブタイトルの元ネタを貼り付けておく。え、2巻は?

第1作 上弦の月を喰べる猫

上弦の月を喰べる獅子 上 (ハヤカワ文庫 JA ユ 1-5)

上弦の月を喰べる獅子 上 (ハヤカワ文庫 JA ユ 1-5)

第2作 バケツ一杯の猫

バケツ一杯の空気 (1980年) (サンリオSF文庫)

バケツ一杯の空気 (1980年) (サンリオSF文庫)

第3作 百億の猫と千億の犬

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)

第4作 マイナス・ネコ

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

第5作 猫は無慈悲な夜の女王

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

第6作 ネ航船団

虚航船団 (新潮文庫)

虚航船団 (新潮文庫)

第7作 猫は沈黙せず

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

第8作 猫転世界

逆転世界 (創元SF文庫)

逆転世界 (創元SF文庫)

第9作 猫へ贈る真珠

ちなみに

第1作であっちゃんが読んでいるのは小松左京の『さよならジュピター』(サンケイ出版)。

引越ダンボールの中には『夏への扉』も見える。

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

2014年9月の読書記録

読んだ本の数:18冊

すく〜〜〜と! (1) (ジェッツコミックス)

ヤマハ発動機が協力してるってんで気になって読んでみた。バイクに興味がなくてもスクーター楽しそう乗ってみたいとか思ってしまうなこれは。藤田一己は原作とクレジットされているが原作ネームとバイク作画を担当しているそう。新久千映の丸っこいかわいい絵柄が醸し出す雰囲気がとてもよい。
巻末にはヤマハ発動機でバイクの開発や設計に携わる社員6名による座談会も収録。バイクが好き好きで仕方がないってのが伝わってきて面白い。
読了日:9月30日 著者:新久千映

特装版 犬とハサミは使いよう10 (ファミ通文庫)

完結。途中から気持ちが高ぶってしまいぼろぼろ泣きながら読んでたんだけど期待を裏切らない幕の畳み方は実に爽快だった。この話、もうほんと大好き。面白かった。
読了日:9月30日 著者:更伊俊介

天使の傷痕 (講談社文庫)

新井素子書店で購入した本。1965年の第11回江戸川乱歩賞受賞作。西村京太郎は初めて読んだような。予想外に、と言うと著者と新井素子さんに失礼だが、すごく面白かった。俺が生まれる前に書かれた小説だがその社会性は少しも古びていないように思う。最後の方で涙が出た。泣くような話ではない。世田谷文学館へ行く前にこの本を読んでたら聖地巡礼ぽいことができたかも。
この話の後には同じく新井素子書店で売っていた『獄門島』を読まねばいけないような気分になっているんだがそちらはまだ購入していないのだった。どうしようかな。
読了日:9月27日 著者:西村京太郎

天使の傷痕 (講談社文庫)

天使の傷痕 (講談社文庫)

れもん、よむもん!

ZUCCA×ZUCA』チックなゆるゆるのおちゃらけた感じから始まっているが、中盤以降は読書を通じて自分や世界を発見していく中高生時代を描いた自伝となっており、読んでいて感銘を受けたと同時にそれに共感するような思い出のない自分に対して、おっさんいい年こいて何しとんねんと忸怩たる存念が沸き上がってきたりした。
読了日:9月27日 著者:はるな檸檬

れもん、よむもん!

れもん、よむもん!

ひみつのひでお日記

JKと読書と映画と日常生活。精神的に辛い状況の中そこはかとないおかしさが漂っていて読むのは楽しい。特筆すべきはあの「もとちゃん」キャラを確立させた張本人が現在の割とリアルな新井素子さんを描いていることである。似てるし雰囲気出てる。
読了日:9月26日 著者:吾妻ひでお

なんて素敵にジャパネスク (5) 陰謀編 (コバルト文庫)

ついに帥の宮登場。ずいぶんと強烈なお目見えだったがその行動の裏に潜むものとは? 得体のしれない敵(?)を相手に瑠璃姫がずいぶんと生き生きしてきた。続きをまだ買ってないんだけど読むの楽しみだ。
読了日:9月24日 著者:氷室冴子

なんて素敵にジャパネスク〈5〉陰謀編 (コバルト文庫)

なんて素敵にジャパネスク〈5〉陰謀編 (コバルト文庫)

あんな作家 こんな作家 どんな作家 (ちくま文庫)

単行本は1992年の刊行で2001年に講談社文庫より再刊され、これは2度目の文庫化となる。新井素子さんへの取材を元にしたエッセイ「素子の好き嫌い」が収録されているので三度目の購入。初出は1986年(新井素子さんは新婚ホヤホヤ時代)だから28年前であるが、読み返してみた処受ける印象は全く変わっていない。講談社文庫の『グリーン・レクイエム』は当時3年間で50万部が売れたそうである。講談社文庫の歴代ベストセラーに名を連ねるのも頷けるってものである。
出て来る作家さんたちが十人十色で面白い。創作活動に対して正反対の意見を持っている人もいればその生き方も様々である。清水義範の解説がこの本の面白さをよく伝えている。付け加えるなら、作家である父を通じて個人的に交流のある作家さんとのエピソードはこの人でなければ書けないものであり、それもまた興味深い。
【関連記事】新井素子さん最新情報 by 素研|新井素子インタビューを収録した阿川佐和子エッセイ集『あんな作家こんな作家どんな作家』がちくま文庫で復刊
読了日:9月21日 著者:阿川佐和子

ダブル・ロール! (2) 坂崎良太郎16歳。勇者で魔王で救世主になります! (富士見ファンタジア文庫)

最大の謎はロボットのねんれいの横に表示された(1)である。……ロボットなのにっ!
いつもながらのノリの良さにニヤニヤしながら読み進み一気に大団円。楽しかった。そしてまだヤマザキのダブルロールは見つけられていないのだった。どこにあるの。
読了日:9月21日 著者:左京潤

KIMURA vol.4 〜木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

合気道の技術は万人向けなのだろうかという疑問が昔からあるんだが。珠美姐さんの気っ風の良さと凹む木村の対比が面白い。
読了日:9月20日 著者:原田久仁信,増田俊也

キマイラ10 鬼骨変 (朝日ノベルズ)

相変わらず物語は全然進まないが菊地の存在感がずんずん高まっておりその日が来る予感がびしびし伝わってくる。果たしてどんな状況で。楽しみ。あと深雪ちゃんに幸せは訪れるのか。あんまり可哀想で。
P.34。九十九三蔵と書いてあるのは九十九乱蔵の間違いでは。
読了日:9月20日 著者:夢枕獏

少年☆少女☆レアカード (1) (アクションコミックスHigh!)

「オシャレにコーデしたマイキャラで高得点を競うリズムゲーム」にうっかりはまった女子中学生と成績優秀・スポーツ万能・眉目秀麗だけどちょっとずれ気味の王子様(同級生)のゲームを巡るラブコメ。ほんわかしていて面白い。ラブベリとかアイカツて全然知らなかったけどこんな感じ?
作者さんが子育て中だからか主人公の妹ちゃん(保育園児)の描き方がまさにこれだ! という感じで可愛らしいやら憎たらしいやら。あと、P.74は俺と同世代ならたぶん笑う。
読了日:9月17日 著者:山名沢湖

うなぎのうーちゃん だいぼうけん (福音館の科学シリーズ)

うなぎのうーちゃんが生まれてから死ぬまでを最新の知見を反映させて描いた絵本。うなぎの生態てこんな風なんだ、という新鮮な驚きがあって面白い。うなぎにとって日本の川はどんどん住みにくくなってるんだろうね……。途中でちょっと笑った。
著者のくろきまり(黒木真理)氏は東京大学大学院農学生命科学研究科の助教だそう。
読了日:9月17日 著者:くろきまり・ぶん/すがいひでかず・え

うなぎのうーちゃん だいぼうけん (福音館の科学シリーズ)

うなぎのうーちゃん だいぼうけん (福音館の科学シリーズ)

星への旅 (新潮文庫)

一昨年から昨年にかけてジュンク堂書店池袋本店で「SFブックミュージアム」というSF本のフェアが開催され、その一環として日本SF作家クラブ所属の作家個人が推薦する本を集めた「作家書店Petit」という企画があった。新井素子さんもこの企画に登場したので買いに行った。1月6日だった。売っていた本はこちら。

未読のをいくつか買ったがその後読んだのは手塚治虫の『ヴァンパイヤ』全3巻のみという始末であった。1年と数ヶ月が過ぎ去りぼちぼち読んでみるかという気になってきたので吉村昭『星への旅』を読んでみた。理由は特にない。
内容は非SFで(当たり前だ)リアルな描写の積み重ねが虚無主義に収斂していく様に味わいがある。虚無主義というのに新井素子さんとの共通点を感じてしまう訳だが、死んだ少女が一人称で自分の身体が解体されて行く様子を語る「少女架刑」は、これもう絶対新井素子さん好きだろ、と深く納得してしまうのであった。読み終わってから思い出したが新井素子さんは『星への旅』について雑誌にエッセイを寄稿している。「この中の一編、「少女架刑」に魅せられた。」だそうである。

新井素子さんは1979年、19歳の頃に吉村昭を好んで読んでいたらしい。

他にも好きな作家として吉村昭の名前を挙げていたインタビューがあったような記憶があるんだが名前を拾っていなかったようで検索しても出てこない。
読了日:9月16日 著者:吉村昭

星への旅 (新潮文庫)

星への旅 (新潮文庫)

茶柱倶楽部 (6) (芳文社コミックス)

川根出身のお茶バカ娘が色々なお茶で人と人の縁をつなぐ物語。この巻では沖縄を舞台に戦後の秘話が語られる。歴史って知らないことばっかりだ。そして出て来るお茶のなんとも言えない雰囲気にまたまたうっとりする。川根茶や深蒸し掛川茶など静岡のお茶も素敵な小道具として登場するので地元民が読むとちょっとうれしい。土佐番茶もおいしそう。
読了日:9月16日 著者:青木幸子

茶柱倶楽部 6 (芳文社コミックス)

茶柱倶楽部 6 (芳文社コミックス)

走れメロス (新潮文庫)

「女生徒」

美少女の美術史展で上映されるアニメを見るための予習のつもりだったが、若年女性の一人称口語体語りかけ風しかも饒舌、というのが新井素子ファンとしては興味深い。遠景として配置できそうな感じ。新潮文庫解説より。

男性の作者がなぜここまで、若い女性を表現し得るのか、不思議である。若い女性が太宰にとらえられ、熱烈なファンになるのはこれらの作品を読めば、当然だと納得できる。しかし女性作家が、なぜこのような作品を書き得ないか、そこに文学の秘密があるように思える。

秘密だとよ。激しい違和感に襲われるのは俺が新井素子ファンだからだろうか。それとも性差への意識の違いだろうか。
実際の処、星新一太宰治新井素子の共通点について(冗談かも知れないけれど)言及している。『幻想文学』11号(1985年)のインタビュー「星新一 戦後・私・SF」とその後に刊行された『新井素子100%』掲載のインタビュー。『新井素子100%』P.39-40ではこのように語っている。

この間、『幻想文学』という雑誌がインタビューに来て、新井素子の話になったんだけれども、彼女についてぼくは太宰治との共通点みたいなものを感じたわけですね。太宰というのは空前絶後の作家で、死後なお読まれつづけている。なぜそんなに魅力があるか考えてみると、太宰の作品は読者個人ひとりひとりに語りかけてくるような書き方をしているんですね。
新井素子もそれが言えると思う。要するに、読んでいる読者個人にとっては、テレビを見ているというより、電話で話を聞かせてもらっているような感じがするんじゃないかと思うわけですな。非常に個人的なお話を聞かせているようなのが、新井素子の文体の一つの特色でしょう。新井素子も太宰を読んでいるそうだから、そこに一つの共通点があるんじゃないかという気がします。

新井素子さんが太宰の名前を上げているのは、「毎日新聞」1978年1月22日の記事くらいしか把握していない。

「駈込み訴え」

主への妄執を嘆くか鴻鵠の志を知らぬ燕雀の器量の小ささに憤るか最後の自己欺瞞を笑うか。話者の惑乱ぶりが時々筒井康隆の小説の登場人物に見えて可笑しかった。しかしそれもこれも惑星開発委員会(漫画版)の計画の内だと思ったら戦慄を禁じ得ない。

「東京八景」

なんかやたらと身につまされて辛いんですけど。

読了日:9月15日 著者:太宰治

走れメロス (新潮文庫)

走れメロス (新潮文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

旧訳版を読んだのは中3の1983年。翌年が、てことで書店で大々的に売られていた。買って読んだが内容はさっぱり判らなかった。

戦争は平和である
自由は屈従である
無知は力である

というスローガンがかっこいいなと思った。
あの頃に比べれば驚く程話についていけたし面白く読めたのが自分でも意外だった。新訳のせいもあるのかも知れない。現状に不満を抱える冴えないおっさんが若いおねーちゃんとの恋愛で自信を持ち自分でも何かできるかもしれないと身の程知らずな大望を持つもやっぱり現状は覆りませんでした、という話。
そのディストピア描写がすこぶる興味深いというか面白い。ニュースピークだとplusgoodで「超いい」てここはディストピアですか。倍超いい。マリナさんグッドですよ! グッド・グッダー・グッデストですよ! 二重思考とか普通に身に付いてるしな。プロレスに演出があると知りながらなお真剣勝負であることを信じている、みたいな。
「附録」が過去形で書かれているので、ひょっとして、と思ったらトマス・ピンチョンが解説でそのことに触れていた。やっぱりそう解釈されるのか、と腑に落ちた。希望、なんだろうか。でもそれが書かれた時代や社会ってのもどんなのかってのは判らんよねと思うくらいには政治的に懐疑的。
読了日:9月11日 著者:ジョージ・オーウェル

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

カオスノート

本当にナンセンスだった。処々でくすくす笑った。面白かった。
読了日:9月9日 著者:吾妻ひでお

カオスノート

カオスノート

わたしの宇宙 (2) (IKKI COMIX)

連載の終了が登場人物の死、というのは親から見た子離れのことなんじゃないかと思った。少なくとも何らかの関係性からの別離を意味するように思う。その言い方で言えばコミックスてのは別の生なんだろうか。連載中の彼らとコミックスの彼らが厳密に同じ人であるかは判らないが。俺にとっては好みの青春ものであった。SFマガジン神林長平の「言葉使い師」を初めて読んだ頃のこととか思い出した。
(別の生じゃなくて死体だったりして。死体よりも先に別の生とか考える自分が可笑しい。)
読了日:9月2日 著者:野田彩子

わたしの宇宙 2 (2) (IKKI COMIX)

わたしの宇宙 2 (2) (IKKI COMIX)

五点リーダとは? 三度。

9月6日に上京し世田谷文学館の「日本SF展・SFの国」を見て、えらい興奮した訳です。展示の中には星新一小松左京筒井康隆など、名だたる作家の生原稿もあり、それらを眺めながらふと五点リーダ問題のことを思い出して、この方々は原稿で点々をどのように書いているんだろうと気になったのでチェックしてみた。
星新一は五点。「・・・・・」である。小松左京も五点。小松の場合は読点「、」を二マス使うリーダに修正した箇所もあったが、その際も「、」の横に点を四個「・・・・」書き入れる、という具合だった。合わせて五点、である。ちなみに筒井康隆の原稿には点々が見られなかった。
翌日9月7日は練馬区立美術館の「あしたのジョー、の時代展」を見に行った。ちばてつやが書いたエッセイの生原稿が展示されていたので思わずチェックしてみたら、なんとこちらも五点「・・・・・」だった。
してみると、製本して六点リーダ「……」となる部分を原稿用紙に書く時には、二マス使って「・・・・・」と五点で書くのが一般的なのだろうか。以前この雑録で新井素子さんの「・・・・・絶句」はなぜ五点なのか、という記事を書いた時に、新井素子さんの生原稿を見たことがあるという方から、それは新井素子さんの書き癖だ、というコメントを頂いたことがあるが、単に一作家の書き癖という話ではなさそうである。
謎は深まるばかりです。